今回考えたコースは2コース。まずは、 サイクリングターミナル から南へ行くコースを紹介します。
[左] ターミナルの入口にあった看板の前で記念撮影。近くの中学校の美術部が制作したそうです。
最初に訪ねる場所は、もちろん 瀧原宮。なんと言っても、ターミナルのお隣さんと言ってもいいほど。瀧原宮の入り口へ回るために、500mほど走るだけです。
みなさんは伊勢神宮って行かれたことはありますか? 私は大学生のときに1度、そして、一昨年に2度目のお参りを果たしました。
平成25年は20年に1度の「式年遷宮」といって、いわゆる神様のお引っ越しがおこなわれます。それに伴って、正面の宇治橋がすでに架け替えられていて、とても良い思い出となりました。
こういう場所って不思議ですね。年を取れば取るほど感動が大きい。
大学生のときには、ただ「広いな〜」という印象しか残ってないんですが、そこそこ年を重ねると、木1本、石1つにも感動。伊勢神宮の、あの厳かな感じと歴史の重みを、体いっぱいに受けることができたのを覚えています。
今回訪ねた 瀧原宮 も同じ。
清らかな参道、苔の香りがする麗しい空気、凛とした玉砂利の音…。ほかに観光客は1人もいなくて、伊勢神宮よりも背筋がピンとなる思いがしました。
瀧原宮は雰囲気だけでなく、造りそのものも伊勢神宮と同じです。
まずは川で手を洗い、それからお参りという配置になっています。
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また、2つの神殿の隣には、同じ広さの敷地があります。「古殿地(こでんち)」と呼ばれ、伊勢神宮と同様、20年に1度ここへ新しい神殿を建て、神様のお引っ越しをします。
リフレッシュの意味もありますが、伝統的な宮建築を継承するため、定期的に建て替えをするのだそうです。
このシステムを初めて知ったときには驚きました。古い神殿を解体し、また新たに組み立てることで、職人さんの技術が受け継がれていくんですよ。
それが1300年以上続いているんですから!!
昔の人の知恵ですよね。
[上] 奥が瀧原宮で手前が瀧原竝宮(たきはらのならびのみや)。どちらも天照大神を祀っています。
[下] 古殿地には、宮2つ分のスペースが。内宮遷御の翌年である2014年10月には、新しい社殿がここへ建ちます。
最近では「パワースポット」というのが流行っていて、ここ瀧原宮もパワースポットとして話題になっているそうです。私はそういうのはよくわかりませんが、なんとなく「気」のようなものを感じました。
静かに自分自身を見直すのにも、いい場所かもしれません。
なにせ、伊勢の神宮よりも人が少ないのがいい!
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真新しい榊がそなえてありました。常にどなたかが、ここを守っておられる証しです。
パワースポットと呼ばれるにふさわしい雰囲気。やはり神様が宿っているのでしょうか?
伊勢も昔の人にとっては憧れの地でしたが、「蟻の熊野詣」と言われるほど人気があったのが、和歌山県の熊野三山です。
地方の人ならなおさら、せっかく伊勢まで来たのなら、熊野も詣でてみたいもの。
その際、伊勢から瀧原宮を経て、熊野まで繋いだルートを「伊勢路」と呼び、ほかに、大阪から紀伊半島の西側を通るルートを「紀伊路」と呼ぶなど、これらを総称して「熊野街道」というそうです。
庶民にとっては一世一代の旅なのですから、伊勢も熊野もダブルで行ける伊勢路は大人気でした。今回、私が紹介するルートは、一部がその伊勢路とかぶります。
旅人を思い浮かべながら走るのもいいですね。
さて、「瀧原宮」というくらいですから、この辺りには滝がたくさんあります。
そして、ぜひ見ておきたいのが、 大滝峡 という渓谷です。巨岩がゴロゴロと川を埋め尽くす、あの絶景を見ることができます。
大滝峡を見るには、まず、おおみや青少年旅行村・大滝峡キャンプ場を目指します。
キャンプ場へのアプローチには歩行者・自転車専用道があるので、それを利用します。ただし、路面に苔がついているので、スリップに要注意。そして残念ながら、途中に階段があります。
でも、森の中を抜けるようなレイアウトで、気持ちよく走れるので、やっぱりこのルートがオススメです。
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歩行者・自転車専用道なので車の心配はありませんが、路面が苔で滑るので注意。
大滝峡ではありますが、まだ序の口。キャンプ場まで行ったほうが、もっと大きな岩を見られます。
専用道を最後まで走ったら、ダムがあります。
その付近に自転車を止め、キャンプ場の奥のほうへ歩いて行きましょう。到着したところが、大滝峡のメインビュースポットです。
[右上] 滝原ダムから見た風景。この辺りも、まだ渓谷とは言えません。魚が遡上できるようにした護岸に注目です。
わぁお! 岩がゴロゴロというより、川岸そのものが岩です(笑)。
こういう景色を見ると、「どうやってできだんだろ」と不思議に思い、地球の成り立ちそのものにも興味がわきます。
またおもしろいのは、この巨岩を使って、江戸時代から続く神事があるとのこと。
それが「おんべまつり」。
なんと、生きた鮎を岩に空いた穴に向けて投げ、それが入ったかどうかで一年の吉凶を占うという、全国唯一の「鮎占い」なんだそうです。
その穴というのが、写真の矢印で示した穴で、大きさは直径約80cm。そこへ7mほど離れた場所から鮎を投げます(写真の私が立っている場所です)。
毎年7月の第1日曜日におこなわれるそうですから、それに合わせてサイクリングに来るのもいいですね。
この辺でちょっと、腹ごしらえでもしましょうか。
熊野街道を南下し、大紀町の中でも阿曽という地域へ行きます。そこにはなんと、廃校になった小学校を改装した温泉が!
ふれあい総合施設「 阿曽湯の里 」と言います。
そしてそこには、教室を利用した食堂「あすなろ食堂」があります。元小学校の校舎と聞くだけでワクワクしますね。
[右上] 旧阿曽小学校を改装した阿曽湯の里。地域のみなさんの憩いの場です。
[右下] 懐かしい雰囲気の残る廊下。この奥に温泉があります。
そして実際に行ってみて、一層ワクワク。だって、廊下や教室の黒板、オルガンなどが、どれも懐かしい雰囲気でいっぱいなんですもの!
食事は、地元のお母さんたちが作ってくれる素朴なメニュー。私は「うどんセット・味ご飯つき(550円)」をいただきました。味ご飯とは、炊き込みご飯のこと。うどんは伊勢うどんのように太い丸麺なんですが、伊勢うどんよりコシがあって、出汁が関西系の薄味でした。お母さんたちの愛情が、心にホンワ〜カと伝わってくる食事でした。
温泉はサイクリングの途中なので入れませんでしたが、夜、ターミナルから移動してわざわざ入りに来たのは言うまでもありません。
泉質はナトリウム・カルシウム‐炭酸水素塩・塩化物泉で、入ると少し肌がぬるっとする、美肌の湯として有名なお湯です。泉質に「炭酸」とあるように、この辺りには炭酸水が湧きでていて、昔は近くに炭酸水工場があったそうです。
今でも、炭酸が湧き出ているところだけは残っているとか。
地域のコミュニティスペースとしての役割も担っていて、しかも、廃校を利用するなんてナイスアイディアだと思いました。いっそのこと、食堂のメニューを懐かしい給食メニューにしてもいいかもしれませんね。