景色を堪能しながらひとりで黙々と上っていると、後ろから威勢のいい若い衆3人がやってきました。
荷物をたくさんつけて重そうな自転車だけど、グイグイ上っています。
話しかけてみると立命館サイクリングクラブのみんなでした。普通のスポーツジャージ姿で、フラットペダル、 パッドつきのサイクリングパンツさえ履いていない彼ら。
自転車を持たせてもらうと、めちゃめちゃ重いっ! 持ち上げられないくらい。
でも彼らは「これに米とか載せて走るんですよ。今日は宿に荷物を置いてきたんです」と明るくさわやかに答えます。
自転車は機材じゃないんですね~。やはり脚ですよ、脚。
それと若さ…かな? いろんな意味で。歳をとると、利便性を追求しちゃいますからね。
ちなみに彼らは、内牧温泉にある阿蘇ライダーズハウスに泊まっているんだそう。1泊900円ですって!
彼らも山頂まで行くというので、再会を祈ってお別れ。
さらに先へペダルを回します。
スタートから約8km地点。
右手に不思議な山が見えてきました。
あ! これが観光ガイドなどによく載ってる米塚だ!
ガイドブックを見たときも驚きましたが、なんとキレイな形の山なんでしょう!
日本人ならほとんどの人がスケッチブックに描くであろう、基本形の山です。
標高は954mしかありませんが、れっきとした火山。 |
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[左] それにしても緩やかでキレイな道。牛馬注意です! このときは全然いませんでしたけど。 |
米塚を過ぎると右に曲がれる道があります。これが赤水駅のほうからきている阿蘇パノラマライン。 そちらには曲がらず、まっすぐ進みます。
ここからちょっと斜度がキツくなり、7%くらいに。でもあと3kmも行けば一度下り坂になり、下った先に草千里があります。頑張れ!
そしてとうとうやってきました!
阿蘇山の風景ではおなじみの草千里。直径約1kmの草原が広がる場所です。
ただ残念なことに、私が行ったときは冬枯れの景色。ここへ上ってくるまでも茶色、もしくは野焼きしたあとの黒色しか見ることができませんでした。
草千里を見て思ったこと…。
「阿蘇は5月以降に来るべきだ…」
もちろんベストシーズンに来ると、それはそれで支障はあります。今回はオフシーズンだったお陰で車も人も少なく、 自転車で走っていても快適でしたからね。
でも、あれだけの牧草地を見ると、「青々とした季節はどんなだろ?」と思ってしまいます。
実際ベストシーズンは5月の連休あとだそうです。
それでも池がある場所まで歩いてみました(自転車は持ち込みNGだそうです)。
手前には馬が並んでいて観光乗馬のスタンバイをしています。馬で回っても気持ちいいでしょうね。
左手奥には、いよいよ近づいてきた火口の煙が見えます。池は冬なので小さくなっていました。
ここは烏帽子岳中腹にあたり、昔は火口だったそうです。だから草地が円形なんですね。
草千里を歩いたら、いよいよ火口を目指します。 火口まではあと4kmほど! やはりラストは脚にきてちょっとキツイな…。でも、もうちょっと!
やがて阿蘇山ロープウェーの発着所にもなっている阿蘇山西駅に到着。
ここに自転車を止め、ロープウェーで火口を目指すこともできますが、
あと1.5kmだし、阿蘇山公園道路は自転車も走っていいということなので、そのままゴールを目指します。
公園道路は有料ですが、料金所まで行くと「どうぞ~、自転車はそのまま行って下さい~」と。やったー、無料!
ロープウェーに乗ったら1,000円かかっていましたからね。
ただ、喜んだのもつかの間。
目の前に立ちはだかる斜面。木が1本も生えていないガレ場に、道が横たわっています。
道の先までよく見えるのは、これが坂だという証拠なんですねー。ハハハ…。
もう笑うしかないと思いながら、必死でペダルに体重を掛けます。なんとか頑張らないと!
そして最もキツいところをとうとうクリア。
一度足をつき、呼吸を整えてから再スタート。
ンググググ~。
やったー、着いた!
中岳火口には駐車場があるので、そこに自転車を止めて火口を見学に行きます。
でも、もう火口は目と鼻の先。ホント、ギリギリまで自転車でアプローチできるということなのです。これって結構、大規模な観光地としてはめずらしいかも!
超激坂はありますが、サイクリストに嬉しい観光地です。
初めて見る火口に感動!
マグマがボコボコと見えるのかと思ったら、意外にも温泉のような溜りがあります。
本当に「湯だまり」というそうです。
ちょっとグリーンがかっているのは鉄分などの成分や光の加減だそうで、火山活動によって色が変わるそうです。 煙は水蒸気なので、気温が下がると多くなります。ですから暖かくなれば、さらに湯だまりの部分が多く見えるんですね。
周辺には遊歩道があるので、そっちにも行ってみます。阿蘇山の火口って1つじゃなかった!
でも、活動しているのは第一火口のみだそう。
なかなか貴重なものを見ました。
しかも苦労して自転車でやって来たのですからね。
ゆっくり見学を終えて下山しようかと思ったら、さっき会った立命館の3人がやってきました。 お互い手を振って再会を喜び、ここまでの道のりを語り合います。
特に最後の上りは「キツかったッス! 18%くらいあったんじゃないですかね~」と大興奮。 私は1度足をついたけど、彼らは「意地でつかなかった」と男を見せます。
再会を祝して記念撮影!
1年生の子は「そんな力残ってないよ~」と言いながら、自転車を持ち上げてパチリ。
若いころから自転車の楽しさに気がついてるなんて、うらやましい!
ちなみにあとで調べたら、最後の有料道路の平均勾配は10%、一番キツイところで13%くらいでした。 |
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[左] 周囲には「退避壕」といって、噴火したときに逃げ込む「石のパオ」みたいなものがたくさんありました。 |
行きのツラかった坂も、下れば一気です。
ちょうどお昼時だったので、「
草千里レストハウス 」で昼食にします。
こちらは観光バスもどんどん到着する、いわゆる観光レストハウス。でも「食事はたとえ団体のものであろうとも、出来合いのものは使わない」という、
こだわりの味がいただけるレストハウスです。
あとは下るだけですし、ガッツリ食事といきますか!
熊本の名物がいろいろ食べられるのですが、熊本に来てからずーーっと気になっていた「太平燕(タイピーエン/700円)」を注文。 例えると、ちゃんぽんの麺がはるさめになったもので、こちらも熊本名物です。
スープはとんこつなのに、麺がはるさめなのでサッパリしていて、このあとも走らなければならない私にピッタリでした。 |
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またそのほかのオススメは馬肉を使った「桜丼(1,000円)」、阿蘇山を模した「カツ火山カレー(850円)」などなど。 カツ火山カレーは、五岳になぞらえ5つのカツがのっていて、カレーがマグマのようです。
デザートには「阿蘇高原ソフトクリーム(250円)」を。
阿蘇の牛乳を使っていて、超濃厚! ある雑誌のソフトクリーム特集で、数少ない5つ星を獲得したそうです。
さらに「ジャージーヨーグルトクリーム(300円)」もオススメで、こちらは有名な阿蘇小国ジャージーのヨーグルトを使用。 どちらも捨てがたいので、ハーフ&ハーフ(300円)を注文しちゃいました。どちらも噂にたがわぬおいしさです。
最後の最後に、「ぜひこれも食べていって!」といってお店の方にすすめられたのが「馬串(大/300円)」。
読んで字の如く馬肉の串で、脂身が少なくスパイシーな味付けでおいしかったです!
そうそう、このレストハウスには特典があります。
帰りのJR切符を提示すると、レストランと売店が10%引きに、阿蘇高原ソフトクリームが50円引きになります。さらに「からし高菜(小袋)」をプレゼント。
これはぜひ、「あそ1962」の切符を見せるしかないですね。 |
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[左] 馬肉を卵でとじた「桜丼」。甘辛く味付けされています。 |
さぁ、いよいよ下山です。
「下りは気持ちいいよ~」と周囲から言われていたので、かなり楽しみ。
まぁ、草千里レストハウスを出た直後は、ちょっと上るんですけどね~。
下りは…、もう…、超、超気持ちイイ~!!!
上りのときにも言いましたが、ほとんどが牧草地なんです。だから下界が見えるんです。ときどき、
そのまま空に飛んでいきそうな錯覚に!
行きは時速10kmくらいでのんびり2時間かけて上りましたが、帰りは時速50km出すこともあり、
わずか20分で阿蘇駅に到着。最初がツラければ、最後がラクなんて、人生のようですね。
思ったより早く到着し、帰りの「あそ1962」出発まで少し時間があります。
カメラマンさんとJR九州の担当者さんは総合案内所の休憩スペースでのんびり。私は、駅近くに立ち寄り温泉があるというのでそちらへ。
阿蘇坊中温泉「夢の湯」 というところで、いい温泉でした。汗をさっぱり流して「あそ1962」に乗れます。
無料の足湯もあったので、あまり時間がない人にはこちらがオススメ。
さらに補足情報。もし自転車を持って行かない場合は、阿蘇駅前の駅レンタカー九州阿蘇営業所(ASO田園空間博物館内)で、レンタサイクルができます。 「 楽チャリ 」といって、電動自転車が借りられるんです。料金はJR利用割引料金で2時間300円~ (ただし、急な坂道がある場所[阿蘇火口方面] などには利用できません)。
また宿泊ですが、今回紹介したルートの場合、内牧温泉に泊まってもOKですね。阿蘇駅近くにしたい場合は、私たちも利用した 阿蘇の司ビラパークホテル がオススメです。
さてさて、これで「あそ1962」で行く阿蘇山とその周辺の旅はおしまい。
いろいろ紹介したかったので、レポートが長くなっちゃいましたね。でも、日本一詳しい紹介になったかも!?
超オススメなので、ぜひみなさんも一度行ってみてくださいね♪