今月の特集は番外編! 熊本は阿蘇山までの旅をお届けします。
なぜ今、番外編を企画したか?
なぜなら、「あそ1962」という観光列車に乗りたかったからでーす!
「あそ1962」はJR豊肥線の熊本駅〜宮地駅(阿蘇駅の2つ先) までを走る観光列車として平成18年7月22日にデビュー。 なんといっても私たちサイクリストに嬉しいのは、自転車をそのまま載せられるサイクルスペースを持っていることなんですぅ!!!
輪行袋に入れなくてもOKの列車って、まるでヨーロッパみたい。いつかは乗ってみたいと思っていた列車でしたが、国内で実現できるなんて。
冬季は運休していた「あそ1962」も、3月1日から09年の運行を再開。その再開したばかりの「あそ1962」に、どーーしても乗車したかったのです。
では「あそ1962」に乗ってどこを走るのか?
今回は「彼女も喜ぶ、のんびりくいしんぼサイクリング」と、
「彼氏も満足、阿蘇山ヒルクライム」の2つを紹介します。「くいしんぼ」ということは食べ歩き(サイクリング) です。
脚質に合わせて選んでもらってもいいし、カップルや夫婦で行くなら双方が楽しめる2コースになっています。
…とその前に、チケットを用意しなければ。
「あそ1962」は全席指定。「乗車券(熊本〜宮地/1,080円)」に
「指定席券(500円/閑散期300円)」を購入。
そして「自転車持込利用券」が必要になります。「自転車持込利用券」は無料で、乗車券を見せればJR九州の駅、 駅旅行センター、JR九州旅行支店や九州の主な旅行会社でもらうことができます。
そして2日前には名物駅弁「阿蘇のうなり弁当(1,200円)」の予約もお忘れなく。 こちらの予約もJR九州の駅みどりの窓口、駅旅行センター、JR九州旅行支店でおこなえます。
この駅弁についてはのちほど!
さぁ、いよいよ乗車です。
1日1往復の「あそ1962」なので乗り遅れるわけにはいきません。
10時12分熊本駅発ですが、9時45分に入線するというので、早めにホームへ。この日は0B線に入線です。 自転車をコロコロ転がしながら駅構内へ。
なんだかヘンな感じ。いつもなら「自転車は入らないでください!」って怒られる場所なのに。
そのまま転がしながら改札へ。
やっぱヘン! でも嬉しい!
ホームで待っていると、やってきました「あそ1962」!
車両がシブくてレトロ〜。
そして美しい!
「あそ1962」の『1962』は、使用されている気動車「キハ58形(キハ58-139)」が1962年(昭和37年) に製造されたことにちなんで。
だからレトロなデザインなんですね。
これも
先月の特集 でその名前が登場した、
水戸岡鋭治氏のデザインです。
自転車を持っている場合は、中央の出入口から入ります。
本当に、このまま持って入っていいんですね!?
[左から順に] サラリーマンや地元の人が行き交う構内なのに、自転車を押して歩けるというのがスゴイ。でも迷惑にならないよう注意しましょうね。 ホームも自転車と一緒! こうして歩けるなんて、憧れていたヨーロッパのワンシーンみたい。 エンブレムには「ASO1962」や「ASO CALDERA LINER (阿蘇カルデラライナー)」の文字が見えます。ディーゼルカーで、使用車両はキハ58形とキハ28形。 |
入るとすぐがサイクルスペースです。
ホイール留めがあるので、そこへ自転車を固定します。
自転車が「ここは私の席よ。エッヘン!」と言っているよう。
[上段・左から順に] 2両編成の連結付近の入口から自転車を載せます。自転車をそのまま持ち込んでも、当然怒られません。 | |||
車内もレトロな雰囲気です。なんと言っても木のぬくもりが、どこか懐かしい感じ。そしてボックス席。窓も開けられます。
これに乗って、生まれて初めての阿蘇山へ近づけるなんて、発車前からワクワクしないワケがありません。 |
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定刻に「あそ1962」が走り出しました。
序盤は街中の風景なんですが、車両の見学をして回ったり、旅の計画を再確認したりしていると、30分ほどで田園風景に変わっていきます。
ほどなくして検札の女性が回ってきました。
この「あそ1962」、なんと客室乗務員がいるのです。
キレイな女性と気軽な会話を交わしながら検札を受けると、ますます旅気分がわいてきます。
しかも今回は、「九州レール・レディ(発行: メディアファクトリー)」といって、 鉄道客室乗務員のノンフィクションを著した奥村美幸さんが担当。
サービスに定評があるJR九州・客室乗務員の中で、乗客が名指しで褒めるほどサービスの達人なんだそう。そのウワサに納得。 奥村さんの笑顔を見ていると、こっちも元気が出ます。
サイクルスペースには彼女たちが手作りした「あそおすすめBOOK」なるものも置いてあります。 地元の方ならではの情報が満載なので、ぜひチェックしておきましょう。
そしてその奥村さんが、今度は運転士と乗務員の帽子を持ってやってきます。その帽子をかぶり、 乗車記念のプレートを持って記念撮影ができるのです。シャッターは奥村さんが押してくれますが、私は2ショットをお願いしちゃいました!
そんなこんなで乗車後約1時間が経過する11時16分、「あそ1962」は立野駅に到着します。ここからが「あそ1962」のハイライトです。
立野駅で「あそ1962」は約20分間停車します。
その間は車外に出てもOK!
まずホームで売られている「ニコニコ饅頭(8個入り/300円)」を購入します。駅前の「ニコニコ屋」が作る名物饅頭なんです。
買ったらスグに、客室乗務員が先導する団体を追いかけましょう。彼らが向かった先は、立野橋梁。
橋脚のうち3基がトレッスル橋脚になっているんだそうで、とにかくめずらしい橋なんだとか。
乗客のほとんどは、この立野橋梁の見学へ行き、客室乗務員が記念撮影をしてくれます。
それは行かねば!
わぉ!
なんだかアメリカ映画に出てきそうな橋!
私もプレートを持って、ちゃっかり記念撮影。
ちなみに「あそ1962」はこの橋を渡りません。ここを走るのは、これまたぜひ乗ってみたい南阿蘇鉄道のトロッコ列車です。
「あそ1962」が立野駅に着いた直後に、トロッコ列車も入線していました。
南阿蘇を旅するときは、このトロッコ列車に乗るとグッドです。
橋を渡らない理由の1つであり、また「あそ1962」の見どころのひとつでもあるのが、この立野駅でのスイッチバック。 立野駅を出た「あそ1962」は、来た方向へ引き返します。
スイッチバックは 08年11月の特集
でもお伝えしましたね。
斜面が急すぎるので、列車がジグザグに上っていくアレです。
立野駅のひとつ手前にある瀬田駅の標高が170m。立野駅は277m。そこから次の赤水駅が標高465mあります。
この区間が急なため、「あそ1962」はスイッチバックして進みます。
立野駅を出てしばらくしたら、「あそ1962」が止まりました。
駅がないのに止まったので、ここでスイッチバックするということです。
運転士さんがハンドルを持って車内を移動します。
逆サイドの運転室に行くのです。
そしてゆっくり反対方向へ発車。
わぁ〜、上ってる! 上ってる!
下を見ると、先ほど走ってきた線路が見えます。
このスイッチバックこそ、阿蘇を体感する注目ポイントです。
阿蘇山周辺は世界最大級のカルデラです。カルデラとはスペイン語で「鍋」を意味し、火山活動でできたヘコミのこと。 27万年前から何度も噴火し、9万年前の大噴火でとうとう大地がヘコんでしまいました。その中央にニョキニョキと形成されたのが阿蘇五岳(あそごがく)。 実は「阿蘇山」というものは存在せず、この阿蘇五岳の総称を阿蘇山といっています。
よくガイドブックにある火口の絵は阿蘇五岳のひとつ「中岳」。今でもモクモクと白煙を上げ、火山活動をしているんです。
スイッチバックしている箇所は、カルデラ部分が陥没する際に残った外輪山の裾野。 ちょうど鍋底がカルデラで、鍋ブチが外輪山なので、そのフチを上っているというワケです。