佐波川自転車道は全長32kmあるのですが、前日走ったのはたった数キロ。
せっかくなので、どんなサイクリングロードなのかを知るべく、2日目は上流を目指して走ってみることにしました。
前日、自転車道脇に立っていた案内板に、「 岸見の石風呂 」という場所の案内があり、その写真に心ときめかせた私。
大きな石のかまくらみたいなものから、子どもたちが楽しそうに顔を出しています。
場所は、自転車道の終点付近。
これは行ってみなければ!
ターミナル前から自転車道に入り、川を左に見ながら進みます。自転車道は専用道だったり、車道脇だったり、ちょっと迷う箇所もありますが、 常に道標が立っているので、それを目安に進みます。
やがてルートは、防府市から山口市へ。
自転車道が中塚橋に差し掛かるところで、自転車道の看板に「
岸見の石風呂 まで700m」と書いてあります。
その通りに中塚橋を渡り、橋を渡りきったところで右に進んで、さらに看板に従って行くと…。
小さなわらぶき屋根の建物を発見。ここが 岸見の石風呂 ?
それらしいものがないので、「きっとこの裏山にあるのかな?」と登りかけたそのとき、小屋の中で物音が。 「こんにちは!」と声を掛けてみます。
中から出てきたのは、石風呂を守る地元のおばあちゃん、竹村清枝さん (78歳)。
「石風呂を見に来たんですけど、いったいどこにあるんですか?」と尋ねると、「ここだよ」って、小屋の扉を開けてくれました。
なーんと、石風呂は小屋の中にあったのです。私は山の洞窟みたいなものを想像していました。
ちょうど納屋のような場所に、石でできたドーム型のものが鎮座しています。
「これが石風呂」と清枝さん。
石風呂はいわばサウナのようなもの。 朝から石風呂の中で薪や薬草を燃やしてそれを取り出し、温まった石の熱を利用してサウナのように風呂に入るのだそうです。
「昨日、火を入れたばかりだから、まだあったかいよ。入ってみる?」と言われ、私は大喜び!
まさか体験できるとは思ってもみなかったから。
中に入ってみると、確かにほーんのりあったかい。
「体の悪いほうを下にして寝るんだ」というアドバイスに従い、ゴロンと横になってみます。
あー、心地よい。このまま寝てしまいたい。
石風呂は、この辺りにはいくつもあったそうですが、今でも火入れができる昔からの石風呂はここだけ。 今や国定重要有形民俗文化財になっています。
この石風呂ができた由来はこうです。
鎌倉時代、東大寺再建を命じられた重源 (ちょうげん) 上人は、ここ山口・徳地から材木を切り出し、
佐波川を利用して奈良へ運ぶ事業を手がけていました。
その際、多くの従事者がケガや病気に悩まされるのを見て、
「この石風呂で健康になってもらおう」と、徳地に石風呂を作ったんだそうです。
それが約820年前!
石を積み上げ、赤土で接着して風呂を作り、820年もの間火入れが繰り返されていたと思うと感激。
火入れのときは、煙がわらぶき屋根全体から立ち上り、その光景をフィルムに収めようと、写真家たちもやって来るそうです。
その写真が小屋に掛けられていましたが、それはもう圧巻! 知らない人が見ると、火事だと思うはず。
入り方のコツは、「サウナみたいに汗を流すんじゃないんだよ。汗が出そうになったら外に出て。 火入れ直後は暑くて1、2分しか入れない。入っては出てを繰り返すんだぁ」と清枝さん。
石風呂から出たら、火入れで使った置き火の囲炉裏でくつろぎます。
材料を持って行けば、バーベキューをしてもいいそうです。火入れは、予約をすればしてもらえるんだそう。
料金は1回1万円。「1人で来ても1万円、20人で来ても1万円」(清枝さん) 。
こうしていつもいつも手入れをしてくれている清枝さんを見ていると、もっとお支払いしたいくらいです。
貴重な体験をさせてもらい、小屋の中にあった重源上人のお堂にもお礼を言って帰りました。
重源上人の話を聞き、この先に重源上人の像が立っているというので、そこを目指すことにします。
自転車道は、途中クネクネと蛇行をする箇所もあり、
どこに重源上人の像があるのか不安になりましたが、一般道に出るところに、ガソリンスタンドが見えたらもうすぐ!
橋を渡り、先方に赤と黒の塔が見えたら、そこに重源上人がいます。
重源上人の像がある場所は、ちょっとした休憩スペースになっています。そこに自転車止めがあって、ちょっと嬉しかった。
こういう心遣いがね! ただし、 MTBのタイヤは入りきりませんでしたけど…。
でも心遣いに感謝。休憩用の東屋も、自転車道の所々にあります。
そしてとうとう出会えました、重源上人。丸太の上に乗り、堂々と佐波川を下る姿で立っていました。石風呂を作ってくれてありがとう!
2日目のサイクリングはここで折り返し。ここまで約17kmでした。往復で34km。 脚を止めなければならない箇所は皆無なので、スイスイとサイクリングできます。
最後はオムライスが地元で評判の、「ねむの木」というカフェでオムライスを食べて帰りました。
さてさて、これで「 防府市サイクリングターミナル」の旅はおしまい。
防府はなかなか来る機会がなかったのですが、心落ち着く神社仏閣や自転車の走りやすさなど、「防府、かなりイイ!」というのが、私とカメラマンさんの意見。
また、人もいいから! 今回出会った方々は、みなさん気さくに防府の良さを伝えてくれました。
この原稿に出て来ない人もいて、自転車で走っていたらたくさんの方から声を掛けられたんですよ。都会にはない、人のふれあいを感じました。
みなさんも、おいでませ!