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フリーライターの 詳細へ土肥 志穂 が サイクリングロードを実際に走っておすすめポイントを紹介します!

お楽しみはまだまだ。「カキ」、「世界遺産」、「薬湯風呂」
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2時間半の航行を終えて、クルーズフェリーは広島・宇品(うじな)港へ到着。自転車をそのまま積んでいるので、港からすぐにサイクリングへ出発です。

ここからの予定は、帰りの時間に合わせて組みましょう。
メニューは3つ、「カキ」「世界遺産」「薬湯風呂」です。

まずは「カキ」。
今、広島では「ひろしまオイスターロード」と題して、県内各地に焼きガキを食べさせる「カキ小屋」が出没しています。これが大人気!

カキ小屋と言っても、ビニールハウスでできた、わりと簡単な作りの建物ですが、その中で広島名産の新鮮なカキが、格安で食べられるとあって、県民にも大好評なのです。

クルーズフェリーが到着した宇品港からたった1km先に、このカキ小屋1号店・詳細へかき小屋えびす丸 があります。
これは寄らない手はないでしょう!

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ビニールハウスのカキ小屋の中には、焼き台とビールケース製のイスがズラリと並んでいて、入り口で買った食材を自分で焼いて食べます。
飲み物も自動販売機があるので、自分で買います。

なんでもセルフサービスですが、それだけ安くカキが食べられますし、この気軽さがまたいいんですよねー!

カキは1kg(殻つき) で1,000円。1kgというと10個ほどです。普通はこの値段ではなかなか食べられないそうです。これも産直だから成せる価格。
ほかにもサザエ2個で600円、いか500円など、カキが食べられない人と一緒に来てもOKなメニューもたくさんあります。

「カキが食べられない人」と書きましたが、実は私…。広島県人のクセにカキ…苦手なんですぅ!!!!

でも、このカキ小屋ができたワケを聞いて、「これは食べなければ!」と思いました。

…というのも…、今、広島の子どもたちはカキの食べられない子がたくさんいるんだそうです。

それは「あたるのが怖いから、親が食べさせない」とか、いろいろ理由があるんですが、そもそも、こうして炭火で焼きガキを食べる経験なんて皆無という状況も続いているとか。

「広島名産のカキのおいしさを子どもたちに知ってもらいたい!」…、そんな思いがこのカキ小屋創設の裏にあるという話を聞き、「それは食べなければ!」と地元愛が湧いた次第です。

[右側写真/上から順に]

画像へ 小屋の外に自転車を置かせてもらいました。係の人が近くにいらっしゃるので、一応安心。

画像へ 入口のこのカウンターで食べたいものを買って、自分で運びます。おかわりが欲しいときは、またここへ買いに来ます。

画像へ この1カゴが1kg(約10個)です。これで1,000円は安い!

画像へ 中に並んだ手作りのテーブル&イス。三原店のイスは、なんと広島市民球場の外野席を利用しているそう。行きたい! 座ってみたーい!

画像へ 小屋の中にもメニューがかかっています。何を食べようかな?

考えてみたら、私も30ウン年生きてきて、炭火でカキを焼くのは初めて!
これで私も正真正銘の広島県人になれるか!? 1個目をパクリ…。

「うっ! お、お、お、おいし〜い!」

画像へ [左上]わぁ〜、カキが焼けてきました。プリプリ、ジューシーです!

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カキってこんなにおいしい食べ物だったんですね。
ほどよい磯の香りと、旨み、コクが口の中いっぱいに広がります。臭みなんてじぇんじぇんなーい。

「このカキは特殊な洗浄をしとるけぇね。そこいらに売っとるカキとは違うんよ。臭みもないし、あたる心配もないしね」

そう教えてくれたのは、広島県庁の米山俊哉さん。
県ではひろしまオイスターロードの広報活動をしているそうで、今回のこのカキ小屋情報は、米山さんからいただいたものです。

また米山さんは、広島で展開中の「海の道プロジェクトチーム」の一員でもあり、県内のサイクリングルートの確立や、イベント立案などに尽力されています。

広島にはこんなにたくさん魅力的な場所やモノがあるんですから、ぜひ、多くのサイクリストが楽しめるよう、整備を進めていってもらいたいです!

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画像へ カキ初心者の私なので、お店の方にお世話になりました。カキは3月が一番太っておいしいそう。これからの季節が狙い目なんですよ。

画像へ 平日の15時過ぎだというのに、このにぎわい。地元の人も通うので、余計お客が多いんですね。

画像へ 案内してくださった広島県庁の米山さん(右)と、これまた海の道プロジェクトチームの一員である渡部香織さん。ぜひ、たくさんのサイクリストを広島へ!

いや〜、それにしても、カキ小屋のお陰で私もカキが食べられるようになりました♪ 実は同行したカメラマンさんもカキが苦手だったんですが、「おいしい、おいしい」といっぱい食べていました(笑)。

広島の味覚を堪能したら、ゴール地点である 詳細へ原爆ドーム へ向かいましょう。
こちらが2つめのアトラクション「世界遺産」です。

原爆ドームがある広島平和公園までは5kmほどですが、交通量が多い道を通るので安全に走りましょう。

広島平和公園には原爆ドームのほかに、原爆死没者慰霊碑や資料館など、時間をかけてみたいものがたくさんあります。

毎年、原爆が投下された8月6日に平和祈念式典が行われるのも、この公園です。
公園の中央を横切っている細い車道を走ると、やがて正面やや左手に原爆ドームが見えてきます。

もとは物産館のような役割の建物で、西洋的な立派な建築物だったと聞いています。それが1945年8月6日8時15分の原爆投下で、一瞬にして現在のような姿に。
今は平和のシンボルとして、ユネスコの世界遺産にも登録されています。

原爆ドームを見るには、まず、手前に流れる元安(もとやす)川を挟んで見るといいでしょう。人物を入れて記念撮影をするには、ここがオススメの場所だからです。
また、川にも注目して欲しいという理由もあります。

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広島の街は6本の川で形成された中州(デルタ)です。
そのため、橋(Bridge/ブリッジ) が多いのが特徴です。またデルタ地帯には地下鉄が造りにくいために市内電車が発展し、バス(Bass) も多く走ります。

そしてバー(Bar) が多いというのもあって、これを「広島3Bと呼ぶ」…なんて話を小学生のときに聞きましたが、今は言うのかしら?

そしてこの川は、多くの被爆者が「熱い、熱い…」、「水をくれ、水をくれ…」と言って飛び込み、そして死んでいった川でもあります。

画像へ [右上] 原爆ドームとの記念撮影は対岸からがオススメ。

[下・タテ位置写真/左から順に]

画像へ 元安川の向こうに見える原爆ドーム。この川にも多くの被爆者が熱さから逃れようと飛び込みました。

画像へ 元安川にかかる元安橋を渡って、原爆ドームの近くまでいきます。爆心地から約130mと、もっとも爆心地に近かった橋です。

画像へ 原爆ドームの手前にある「動員学徒慰霊塔」。学徒動員により広島で働き、原爆の犠牲となった人の慰霊塔です。

画像へ 原爆ドームの近くは、自転車を押して。徐々に近づくその姿。胸にくるものがあります。

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画像へ [左] 「これは世界中の人が見るべき。日本人なら、なおさら見ておかなければ」。ここへ案内した友人は、みんなそう言います。

私たち広島で生まれた人間は、小さい頃から「平和学習」という名で、戦争のこと、平和のことを学ぶ機会がたくさんあります。

それは当然の機会だと思っていたのですが、実は「平和学習」ってそれほど多くないんですね。今回もカメラマンさんにそのことを話したら、「あんまりそういう時間はなかったなぁ」とおっしゃっていました。

そして原爆ドームを見た衝撃から、「原爆ドームの写真を、土肥さんの笑顔で撮っていいのかな」と思ったそうです。

私はまったく問題ないと思います。広島の街は「100年は草木も生えない」と言われていたのに、戦後65年経った今、こんなに緑にあふれ、人々が笑顔で暮らしているんです。

だからみなさんも、笑顔で広島を訪れ、そして平和について前向きに考えてもらえたら嬉しいと思うのです。
重〜い気持ちで来られると、受け入れるこちらも暗〜くなってしまいますからね。

対岸から原爆ドームを見たあとは、ぜひ対岸へ渡って近くから見上げてください。たぶん、それぞれに感じることがあると思います。

詳細へ原爆ドーム を見学し終えたら、次に進む方向を決めるカードは2枚。

もしも、帰りの時間に余裕がなければ帰路につきます。新幹線の方は自走で広島駅へ。3kmほどですから自転車で行けます。飛行機の方はすぐ近くにある「そごう」の一角が広島バスセンターなので、そこからリムジンバスで広島空港へ行けます。

時間に余裕がある方は、最初に紹介したメニューの3つめ「薬湯風呂」のカードを。

約2km北上したところにある立ち寄り湯「 詳細へ漢方薬湯ティグレ広島 」で、汗と疲れを流して帰路につきましょう。

その店名からもわかるように、ここのお風呂は漢方薬の湯。39度のぬるめのお湯にもかかわらず、浸かっていると少しずつ体がピリピリしてきて、じゃんじゃん汗が出てくるんです。

厳選された生薬が毛細血管にまで血液を行き渡らせ、新陳代謝を促進、自然治癒力を高めてくれるんだとか。2日間、走りまわった体にピッタリです。

しかも嬉しいことに、フロントで輪行した自転車を預かってくださるとのこと!

だから、このティグレまで自走し、敷地内で輪行したあとは、生薬のお風呂で疲れをとって帰路につけるというワケ!!

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画像へ [下] 輪行した自転車は、なんとフロントで預かってもらえます! 嬉しいサービス♪

ちなみに最寄り駅の横川駅までは500m。

そこから電車に乗り、隣駅の広島駅に行けば、新幹線でも帰れますし、広島駅からリムジンバスに乗って空港経由で飛行機でも帰れます。

ところでお風呂のほうなんですが、これが本当にすごくって。入り方の流儀があり、簡単に言えば、「薬湯サウナ→シャワー→薬湯→薬湯茶を飲んで休憩」を1セットにして、これを3セット繰り返すというのが、入浴の基本。

「薬湯風呂に入るとピリピリしますよ」と言われましたが、最初はそうでもないんです。でも、2セットめ、3セットめ…と重ねていくうちに汗が噴き出してきて、特に足先がピリピリ。

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血行が悪い箇所が特にピリピリするんだそう。
うーん、生薬が効いていることを実感。

2日間かけ、サイクリングという「体にいいこと」を充分したと思うのですが、最後にこのお風呂で仕上げをしたような気分です。
わざわざここまで来て正解でした。

画像へ [右上] お風呂内はこんな感じで広々。薬湯茶が用意してあり、飲みながら中央のベンチで休みます。
(写真提供:漢方薬湯ティグレ広島)

詳細へティグレ にはレストランもあり、地元でも「味がいい」と評判です。
あとは帰るだけですし、おいしいお刺身とビールで乾杯もいいですね。広島風のお好み焼きが食べたい方は、広島駅でも広島空港でも食べることができます。

さてさてこれで、瀬戸内海ぐるっと1周サイクリングの旅はおしまい。
これを2泊2日でこなしたとは思えないほど、盛りだくさんの内容になりました。

最後の広島での過ごし方は、帰る時間によってメニューが変わってきますが、私がプライベートで行ったときも、基本的には実行できたプランです(帰りが少し早い飛行機だったので、そのときは焼きガキとお風呂を断念しました)。

一緒に行った仲間には、ロードバイクを買ったばかりの60代男性や、大学生のお子さんがいる40代ご婦人、レースにも参戦して走り盛りの30代、40代男性もおりました。どんな乗り方の人にも楽しめるルートであることは、そのときのみんなの笑顔が証明していました。だから、自信を持ってみなさんにご紹介できたのです。

自転車って、買っただけでは宝の持ち腐れ。乗ってなんぼのモンです。
近所をちょっと走るだけでも冒険気分を味わえますが、それを輪行して旅に出ればなお楽しい。きっと、「日本っていいところがまだまだいっぱいあるんだな」と思うはず。

外は寒いですが、そろそろ春の足音が聞こえてきます。
さぁ、自転車を持って出かけましょう!