そんなこんなで、松山観光港 へ到着!
今回は輪行をせずに、自転車をそのままクルーズフェリーへ載せます。
その手続きをするために、まずは駐車場の端にある「広島・呉ゆきフェリー 切符うりば」と書いてあるプレハブのほうへ。
乗船するのは 石崎汽船 のクルーズフェリー。
車も載せられる大型船で、松山〜広島間を2時間40分で結んでいます。
ほかに1時間ちょっとで広島に着けるスーパージェットもありますが、こちらは自転車を輪行しなければなりません。
今回は船を降りてからも広島の街を走りたかったので、クルーズフェリーをチョイス。運賃も3,200円とスーパージェットのほぼ半額です。
これに、自転車搬送費として420円を払います。
切符を購入し、自転車の運搬賃も支払ったら、ハンドルのところにタグをつけてもらいます。
[右側写真/上から順に]
自転車をそのまま預ける場合は、ターミナルへは行かず、車の受付と同じ、駐車場脇のキップ売場へ。
出港の10分前までに、乗船料と自転車運搬賃の両方を支払います。
自転車の運搬賃を支払うと、ハンドルにタグをつけられます。フェリーは呉港にも寄るので、「この自転車は広島まで」という意味です。
左のヘルメットの方がタグをつけてくれて、乗船位置を教えてくださいます。だから、初めてでも安心。
ここまで済めば、あとは乗船を待つだけ。松山観光港のメインターミナルのほうへ行きましょう。
今回の行程では、クルーズフェリー乗船時がちょうどお昼どき。
2時間40分もあるので、この間に昼食を済ませましょう。
ターミナルにはお土産もの屋さんがあり、そこにもちょっとしたお弁当は売っているのですが、どうせなら松山の思い出になるような、おいしいお昼を食べたい!
そう思った私は、ターミナルの中にあるレストラン「 大盛屋食堂 」へ事前に電話。無理を言って、お弁当を作ってもらうことにしました。
「うちは弁当屋じゃないから、あんまり取材は受けたくないんだけどねー」という店長。でも結局は、旅人のお腹を満たそうという料理人魂で、とってもおいしい、豪華なお弁当を作ってくださったんですよねぇ、これが。
「ニクイね、大将!」というような店長なんです。
[中上] 松山観光港のターミナル内にあるレストラン「大盛屋」。こちらにお弁当をお願いしました。
[右上] もちろん店内でも食べられますが、無理を言ってお弁当を作っていただきました。
[左下] 「お弁当は作ってあげるけど、取材は受けたくない」とおっしゃっていた店長。心やさしい方なので、こちらのお願いを聞き入れてくださいました。
[中下] お弁当を受け取ったら外へ。自転車という車両があるため、ターミナルからの乗船ではありません。
[右下] おいしいお弁当を受け取って、今からクルーズフェリーに乗るぞ! ラン♪ ラン♪ ラン♪
この記事をお読みのみなさん、朗報です!基本的に事前注文をすれば、 大盛屋 でお弁当を作ってくださるそうです。価格は特に設定はありませんが、私は1,050円でお願いしました。それで充分なボリューム。
でも、夏場だけは食中毒などの心配があるので、受けられないそうです。
本来は、出来立てを食べるスタイルのレストランですからね。夏場はターミナルのレストランで昼食を済ませるようにしましょう。
さていよいよ、クルーズフェリーに乗船です。
石崎汽船には2つのクルーズフェリー「翔洋(しょうよう)丸」と「旭洋(きょくよう)丸」があって、私が乗った便は翔洋丸。旅客定員400人、車積載台数は乗用車換算で40台という大きな船です。
桟橋の手前に乗船する乗用車がズラリと並んでいますが、自転車はその先頭で待ちます。船の前後左右均等に車両が乗るよう、係員の指示で車が進んでいく合間に、「自転車の人、行ってください」と言われます。
ワクワクしながら自転車を押して、いざ乗船!
自転車は壁伝いに置いて、係の人がロープで固定し、車輪止めをつけてくれます。
[右] 駐車場と桟橋の間に「広島-呉行バイク」と書かれた白線があります。ここで乗船を待ちます。
[右] 係の人が慣れた手つきで自転車を固定してくれます。
船が出ると、このスペースには戻れないので、必要なものは持って行きます。
なんと言っても、石崎汽船のホームページには「自転車可」とバッチリ書かれていて、ウェルカムな雰囲気が嬉しいんですよ。
12時10分定刻に出発。船の中は自由席なので、お弁当のためにテーブルのある席を確保したら、ぜひデッキへ出ましょう。船は出港のときも楽しいですから。
去りゆく四国・愛媛に別れを告げつつ、再上陸する広島に思いをはせて、船は行く行く白波立てて…。
船はこの旅のアトラクションです。寝台特急で出発したのが、もう遠い昔のよう。
[左上] 小さくなっていく松山観光港のターミナル。 | ||
[右上] 瀬戸内海のクルーズは、船が進んで行っても絶えず島が見え、飽きないんですよね。だから2時間40分の船旅も楽しく過ごせます。 [左下] 前から、まるで暴走族(?)のように小型船がたくさんやって来ました。船を生活の一部として使っている瀬戸内ならでは。 | ||
デッキで海の雰囲気を満喫したら、お楽しみのランチタイム。
大盛屋 の店長に感謝しつつ、おいしいお弁当をいただきます。
「せっかくだから、松山のものが食べたい」とリクエストしたら、「醤油めし」を入れてくれました。松山で古くから伝わる醤油の炊き込みご飯です。
松山の駅弁メニューとしても有名なんですよ。
船内には売店もあり、数は多くないようですが、醤油めしの小さなお弁当も売られていました。
お茶やビールなども売店で買えます。
ただし、航行途中で販売が終了してしまうので、早めに買っておきましょう。
乗船して、出港を満喫して、お弁当を食べて、ちょっとゆっくり…なーんてしていたら、時刻は13時半を過ぎてきました。
この頃になったら、ぜひ再びデッキのほうへ。
船はもう広島に入っていて、さらに多くの島、そして本土が見えてきます。
[下/左から順に] 船に乗って景色を眺めるだけでこんなに楽しいは、私だけかしら? イヤ、みなさんも楽しいハズ! |
やがて、このクルーズフェリーのメインイベントとも言える、音戸大橋が登場!
ここはデッキに出ていないと大損ですよ!音戸大橋とは倉橋島と本土を結ぶ赤い橋。「音戸の瀬戸」という海峡の上にかかっているので、この名前がついています。
何が見モノかって、その海峡の狭さ。わずか90mしかなく、そこを400人乗りのクルーズフェリーが航行するのですから!
赤い橋と狭い海峡を遠くから眺め、そこへめがけて船がドンドン進んで行くと、「本当に通れるのかしら?」と思うくらいです。
[右側写真/上から順に]
見えてきました、音戸大橋! 橋の下が幅約90mの音戸の瀬戸なんですが、この船が通れるんですかね?
キャー、手が届きそう! 無事に音戸の瀬戸を通れました。結構迫力ある〜!
またこの音戸の瀬戸、平清盛が一日で切り開いたという伝説も残っています。その際、沈もうとする太陽を戻したという仰天エピソードも。
平清盛が金の扇を使って「返せ、戻せ」と叫ぶと、太陽がまた昇ったとか! その伝説に基づいた銅像が音戸の瀬戸公園に立っています。
来年のNHK大河ドラマが平清盛だそうですから、ここも人気スポットになるかもしれませんね。
音戸大橋をくぐると、辺りの景色がちょっと変わってきます。どちらかというと、鉄骨系の景色。そう、ここは戦艦大和も生んだ造船の街・呉なのです。
最近、こういった鉄骨系の景色を眺めるのが流行っているようですが、そこに興味がなくてもなかなか楽しい景色なので、引き続きデッキに残ってみましょう。
最初に見えてくるのが日新製鋼の呉製鉄所。
原料がジャンジャン荷揚げされ、製鉄されていく雰囲気は、外からでも伝わります。
酸化鉄のせいか、そこらへん一帯が茶色い景色になっていて、宮崎駿さんか何かの映画みたい。
なかなか見られない光景です。
次に見えてくるのは、真新しい船、船、船。
ここが、戦艦大和を生んだ造船所です。
もちろん今でも船を造っていて、造船中の船がズラリと並んでいる、これまためずらしい光景を見ることができます。
音戸大橋の先には、全体的に茶色い景色が見えてきます。あれが日新製鋼の呉製鉄所。
ほら、製鉄所って茶色のイメージ。原料が船から荷揚げされ、山となって積んであるのは、船からでもバッチリ見られます。
造船所のドックに、真新しい船が並んでいます。荷物を積んでない船なので底のほうまで見えて、ひときわ大きく感じます。
さらにここ呉港には、海上自衛隊呉地方隊の潜水艦や護衛艦も停泊しています。
潜水艦は頭をちょっと出しているので、よく見るとクルーズフェリーからもわかりますよ。
そういえば昔、湾岸戦争後に自衛隊がペルシャ湾へ派遣される様子をテレビで見ましたが、確かこの呉港から出発する様子が映っていたと思います。
父を見送り、涙をこらえる母娘姿が強烈な印象として残っています。
呉という街は、どことなく戦争の影が残っている街だと思います。
「影」というと印象が悪いかもしれませんが、むしろ逆で、その「影」こそが私たちに平和の尊さを教えてくれるんだと思うんです。影があるからこそ、光がよく見えるように。
広島で生まれた者にとって、「戦争」や「平和」という言葉はとても特別です。
それを語り始めると長くなってしまうので、またこの話は、このあとの
原爆ドーム を訪れた際にしましょう。
[左上から順に]
呉港のすぐ脇には、大和ミュージアムがあります。戦艦大和のことはもちろん、戦争のことや、造船の技術についても学ぶことができます。
屋外に展示してある本物の潜水艦。海上自衛隊呉史料館で、大和ミュージアムに併設されています。
呉港の波止場には、船を係留するための浮きがあるんですが、大きな手榴弾にも見えました。
呉港を出てすぐに見えてきた大麗女(おおうるめ)島。海上自衛隊の弾薬庫があります。
大麗女島の隣にあるのが小麗女島。戦時中はこの2つの島から軍港の見張りをしていたのだとか。
船は一度、呉港に泊まって乗客を降ろします。
もし呉を訪ねたい人は、ここで降りることも可能です。
平和について考えてもらうためにも、呉はぜひ訪ねて欲しい街です。