つらく楽しいアップダウン区間が終わったら、波浮港付近で観光モードに切り替えましょう。まずは、みはらし休憩所の前に波浮港見晴らし台があります。
ここから見る波浮港は、大島の代表的な景色なので、ぜひ記念撮影を。波浮港はかつて、「風待ちの港(海が荒れている場合、ここに退避して静まるのを待つ港)」として栄えたそうです。
また川端康成の小説「伊豆の踊子」の舞台にもなりました。 |
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[左から順に] 見晴らし台の向かいにある、みはらし休憩所。ここも空気入れ&工具設置サービス場所です。 |
見晴らし台から実際の波浮港へ下ったら、ちょっとつまみ食いをしましょう。
地元の寺本さんも、途中走りながら「あぁ、早く鵜飼(うがい) 商店に着きたい〜」と言ったほど。
この「 鵜飼商店 」では、揚げたてコロッケをいただくことができます!
地元の人にも大人気。
素朴な味と、なんと言っても揚げたてが嬉しいコロッケ。
サイクリング途中のつまみ食いとして王道でしょう!
価格も嬉しく、コロッケ60円、カレーコロッケ70円、メンチカツ90円、ハムカツ80円…。
お腹が許せば全部食べたいくらいです。
[右] 「鵜飼商店」のご主人、鵜飼昭男さん。大島町商工会の副会長さんでもあり、この笑顔でわかる通り、とっても優しい方です。
波浮港は遠洋漁業の中継地点でもあったそうで、この辺りには旅館もあり、大変なにぎわいを見せていたそうです。町並は、今もその頃の面影を残しています。
「伊豆の踊子」のモデルとなった旅芸人一座は、この波浮港にいる間、港屋旅館で芸を披露していたそうですが、その港屋が
踊り子の里資料館 として、現存しています。
[右上] かつての栄華を思わせるような波浮の町並。「鵜飼商店」にも昔の写真が飾ってあるので、それと対比してみると興味深いです。 |
中には人形が設置されていて、当時の宴会の光景や、それを楽しませる踊り子たちの様子を再現しています。
…ですが、正直言ってちょっと怖い雰囲気。
玄関を入ったところから、人形の存在に思わずドキッとしてしまいます。この雰囲気は行った人でなければわからないので、ぜひ、話のネタに行ってみてください。
波浮港を見学し終えたら、再びアップダウンの道のりを走ります。でも、先ほど走ってきたところよりはラク…かな? でもとにかく頑張りましょう。
この先には、大島一周道路最大のみどころと言ってもいい、地層断面があります。
地層断面とは…、写真を見てもらったほうが早いですね。こんなふうに、地層の壁がズーッと続く場所なんです。これは圧巻ですよ。
まるで大きなバームクーヘンに飲み込まれるような気分。 |
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[左から順に] ここが大島きっての景勝地、地層断面が続く道! 地球の歴史を感じながら走ります。 |
その高さ3m、距離800m。
地層を形成しているのは、これまで何度も噴火を繰り返した伊豆大島の噴出物。
つまり地球のお腹の中を、こうして見てるってことですかね!? 伊豆大島は、これを見に行くだけでも価値があります。
実はカメラマンさん、高校生のときにママチャリで伊豆大島を一周されたそうなんですが、そのとき見た地層断面より、今回のほうが感動が大きかったそう。
こういう自然の偉大さに触れたときの感動は、年を取ってからのほうが大きいのかもしれませんね。
地層断面を堪能したら、元町でお昼にしましょう。
ランチの場所に選んだのは、寺本さんに紹介してもらった 海鮮茶屋「寿し光」。 大島で獲れた新鮮な魚介類をいただくことができるのはもちろん、大島名物の「べっこう寿司」もいただけます。
「べっこう」とは、地の白身魚を青唐辛子のきいた特製のタレにつけこんだもの。これを握りにしていただくのが、べっこう寿司です。
大島はわさびが採れない土地だったそうで、わさびの代わりに使ったのが島唐辛子である青唐辛子。今でもその風習は続いていて、青唐辛子を刻んで醤油に入れ、それに刺身などをつけて食べるといいます。
テーブルにも青唐辛子を漬けた醤油のボトルが置いてあり、ちょっと、沖縄のコーレーグス(赤い島唐辛子を泡盛に漬けた調味料) を思い浮かべます。
さっそくお店オススメの「おまかせにぎり(上)」をいただきます。こちらはべっこう握りと、その日のお魚の握りが10貫載っています。
初めて食べるべっこうは、唐辛子の辛さがピリリと効いて、これまた初めて食べる味。タイ料理の辛さが大好きな私にとって、べっこうはちょっと虜になりそう!
ホント、おいしいです!
[写真/左から順に]
お店のオススメ「島丼(1,500円)」。べっこうとその日の魚(ムツ、ヒラマサ、クロシリカマス) をどんぶりに盛ったものです。
「おまかせにぎり(上/2,100円)」。手前で赤く光っているのがべっこう握りで、今日はメダイのべっこうだそうです。
こちらはちょっと変わった「石焼ばらちらし(1,260円)」。海鮮のばらちらしが、熱々の石焼に盛られてきます。
さて、食事も済んで、あとは 御神火温泉 で汗を流して帰るだけ!
…と思ったんですが、ここで問題発生。
海の波が高く、この日の出港は岡田港になってしまいました。
最初にも書きましたが、大島には元町港、岡田港と2つの港があり、その日の海の状態でどちらに着き、どちらから出るか変わります。どっちになるかは、その日の午前中には決まり、今回私たちは、 サンセット・パームビーチ・ラインを走っているときに聞こえた町内放送で、岡田港から出港することを知りました。
だから事前に岡田港であることはわかっていたのですが、何せ取材撮影を伴うサイクリング。時間がかかってしまい、お風呂に入る時間がなーい!
観光協会で預けたバッグを急いで受け取り、再び荷物を抱えて7kmの道のりを移動。出港ギリギリに岡田港へ到着したのでした…。
もし元町港出港なら最後の7kmはありませんし、 寿し光 も観光協会も 御神火温泉 も、元町港のすぐ近くです。
元町港には足湯もありますし、お土産も買って、出港までのひと時を楽しもうと思っていました。
うーん、残念。
[上] 船の一番上、Aデッキから見た夕日。帰りは席を取らず、このAデッキで過ごすのも楽しいですね。ただし、寒くなければ…。
大島一周の距離は約45kmです。
もし今回のように、到着したらまず御神火温泉へ荷物を預けに行ったとしても、元町港出港の場合で約55km、岡田港出港の場合で約62kmの道のり。
朝6時に大島へ到着し、午後2時30分の船で大島を出るのですから、滞在時間は8時間半です。上りが多いとは言え、下りも多いので、時速15km平均にしたって4時間ちょっとで回れると思います。時速10kmでも問題ないでしょう。 もっと速く走れる人なら、三原山へ続く上りコースをプラスしてもいいくらい。
でも、もしゆっくりサイクリングをしたいなら、大島で一泊して回るのも、もちろんオススメです。今回は、「ほぼ日帰り状態でも、こんなに大島を満喫できますよ」ということをお伝えできたらと思っただけで、もし泊まりの旅にしたら、さらに多くの体験ができるでしょう。
また東京・竹芝客船ターミナル(竹芝桟橋)発着の方は、高速ジェット船も利用できます。
大型客船とほぼ同じ14時40分大島出港で、16時25分には東京に到着します。
ちなみに大型客船は18時横浜着、20時東京着です。所要時間がずいぶん違いますね。
[右] のんびり進む大型客船は、海の上で夕暮れを迎えます。高速ジェット船では見られない景色。
ただ、大型客船もなかなかいい面がありまして。
横浜港に近づくと、ベイブリッジやみなとみらいのライトアップが、とってもキレイなんですよ! ベイブリッジなんて、その下をくぐるんです♪
そういうオマケが船旅の最後につくと、充実した気分になりませんか?
さてさてこれで、伊豆大島サイクリングの旅はおしまい。
唯一心残りは、 寿し光 で知った大島の味「島唐辛子醤油」をお土産に買って帰れなかったこと。
でも、こんなに気軽に行くことができる大島なんですから! また行けばいいですね。