県道41号から、看板を目印にりんりんロードに戻ったら、とにかく自転車天国の道をどんどん進みます。
あまりにも走りやすい道だからか、この辺りからワザと起伏のついた道や、曲がりくねった道が出てきます。
単調さを解消するための、遊び心を感じます。
りんりんロードは真壁という町に突入。
「真壁町は今、町そのものがブランドになっているんだ」というのは、筑波大学の蓮見先生。
「真壁石が有名で、石材場がいっぱいあるんです。ひなまつりも盛大で、真壁城下の古い町並みもいいんですよ」(蓮見先生)。
「石」について深く話を聞く機会はなかなかないので、蓮見先生の紹介で、 「 相田豊石材 」の相田正志さんを訪ねることにしました。
サイクリングロードが県道7号をくぐったところで、1本目の道を右へ。
突き当りを右に曲がって県道7号に出たところが、「 相田豊石材 」の展示場。
向かいに真壁消防署があって、その裏に給食センター、さらに裏へ行くと、 「 相田豊石材 」の工場があります。
相田さんは、「石匠 (いしく) の見世蔵 (みせぐら) 」という組合に属していて、蓮見先生の研究室グループとコラボレーションし、 新しい石材業の道を切り開いています。
石材業といえば、灯篭と墓石に限定しがちなのですが、相田さんと筑波大の学生が作る石の彫刻は、常識を覆すものばかり。 しかも、なんだかカワイイオブジェがたくさん。
「例えば家の形をした灯篭。
学生たちは土台と屋根に、違う色の石を使うんだよ。俺ら“石屋”からしたら、1つのものに違う色の石を使うなんて考えられないんだ。
[上] 庭先に置くと良さそうな、石の置物。まぁ、この手の彫刻は今までの石材業にもありました。
[中] これが筑波大の学生と作った作品。手前はポストだそうです。題して「いしおさんポスト」。奥にある家の灯篭は屋根と土台の石の色が違います。
でも『どこの家に、壁と屋根を同じ色にしている家がありますか!? これでいいんです』と言われたら、『はい、おっしゃる通りです』と言うしかないよね。
まったく、石屋には考えつかないものを、学生たちから教えられる」と相田さん。
古い伝統を守りつつも、新しい発想にも柔軟に対応する姿が、「本当に石が好きなんだな」と思わせました。
相田さんとの会話の中にあった言葉。
「俺らがたとえどんなにうまく彫刻をしても、自然の石には勝てない。自然の石は本当にかっこいいんだ」
この言葉に“石屋”の魂を感じました。
「石がかっこいい」という言葉、あまり聞けませんよね。
「このブレーキレバー、かっこいい」と言っているサイクリストと同じだなぁ〜と思いました。
仕事が立て込んでいるときでなければ、見学には応じてくれるそうです。
ぜひ立ち寄って、職人・相田さんから、石の話を聞いてみてください。
りんりんロードに戻ったら、すぐに真壁休憩所に到着。
ここへ着いたら、「おにぎりを食べて行かなければ」と蓮見先生に教わったので、 「 たかはし 」というお店を探します。
事前に相田さんにも場所を尋ねてみたら、「バスのロータリーの向こうにある。あのおにぎりは昔から食べてて、ホント、うまいんだぁ。 真壁であそこのおにぎりが嫌いな人はいないよ」と言うほど大絶賛。
相田さんの言う通り、ロータリーのすぐ裏に「そば・うどん・たい焼き・たこ焼き」の看板が見えます。
ここがウワサのおにぎりが食べられる「 たかはし 」。
お店はもともと、駅構内の食堂だったんだそうです。
今年64歳になる高橋保子さんが一人で切り盛りしていて、筑波鉄道廃線後も愛され続け、ここで店を構えて20年。
蓮見先生、相田さんオススメのおにぎりは、なんと肉入り。
長時間煮込んだ鶏のチャーシューが混ぜ込んであって、これ1つでご飯にもおかずにもなります。
「うどんとそばだけ出してたんだけど、『もう少しお腹いっぱいにしたいな』というお客さんの要望があって、 メニュー以外でちょこっと出すようにしていたんです。
それがお陰様で好評になり、今では栃木から買いに来てくれる人もいるんですよ。ある人は一度に何十個も買って帰って、 『冷凍しておいて、お客さんが来たときにだすんだ』と言ってました」(高橋さん)。
なるほど評判のおにぎりは、鶏肉がなんとも深い味わいで、固めに炊いたご飯は一粒一粒がふっくら。
聞けば地元・北条のコシヒカリを使っているそう。
あの、日本が米不足に陥ってタイ米が流通していた時期も、かたくなにこの北条コシヒカリを守り、採算度外視で続けてきたと言います。
なにせ、1つ110円の安さですからね!
人気のおにぎりは、朝7時から売ってます。
売り切れたらおしまいだそうで、それは13時のときもあれば、15時のときも。
うまくおにぎりにありつけただけでもラッキーですね!
「 たかはし 」の お母さんに「元気でね」と声を掛けてもらい、再びサイクリングロードを出発!
ゴールの岩瀬駅までは約10kmです。
本当は真壁の町も見学したかったんですが、もう暗くなりそうなので先に進みます。
真壁は城下町の古い町並みを残しているんだそうです。
約140棟もの見世蔵、土蔵があると言いますから、ぜひ見てみたかったな。
振り向けば筑波山を、今度は反対側から見るところまで来ています。
コスモスやソバの花を愛でながら、傾く太陽の下を快調に飛ばします。この辺りに来ると、ちょっと里山雰囲気の場所も。
途中、雨引休憩所を経て、残りはもう4.6km。岩瀬駅までもうスグという場所で、一度、県道を渡ります。
横断歩道の上には、自転車横断マークの標識。
自転車専用の横断歩道? こんな看板、初めて見ました。
「サイクリスト、ウェルカム!」という気持ちが伝わって、なんだか嬉しいですね。
そしてとうとう、終着地点・岩瀬休憩所に到着!
つくばりんりんロード40.1kmを走破!!
走りやすい道なので、全然ツラくありませんでした。
やっぱり廃線のサイクリングロードは快適ですね。なんてったって、上りがないのがいい (笑) 。
ただし、筑波山麓は、名物「筑波おろし」と言われる山からの風が吹くので、風の強い日はちょっとしんどいかもしれません。
また、サイクリングロードは一般道と交わっている箇所が多く、車に注意することはもちろん、車止めにぶつからないよう気をつけてくださいね。
さてさてこれにて、つくばりんりんロードの旅はおしまい。
走るだけではなく、地元の人との出会いもあって、いわゆる「失われた日本」を感じるサイクリングでもありました。